製作工程について

はじめに土をつくる

DSC_0143.jpg「一、土。二、窯。三、細工。」と云われています。
焼き物作りで一番重要で根幹をなすのが、土です。
焼き物で使われる土はいったいどの様な「土」なのでしょうか?興味の湧くテーマです。

彼の乾山にして「地球上の土石に於いて焼き物に使えぬものはなし。」とまで言わしめています。

私もその通りだなあ、と思いますが、もう少しテーマを絞って考えると、焼き物の土には二つの大きな要素が必要です。一つは可塑性、適度の粘性がある。もうひとつは耐火性、どの位の火に耐えられるか。土には色々な性質があります。

がさがさと砂の多く混じったもの、粘度分が多く乾燥時に歪みや切れが生じ易いもの、土の数だけ焼き物がある、と言えるかもしれませんね。

土の性質を知り、土を活かし土が持つ造形を引き出せたら、素直で自然な喜びのある器が出来るでしょう。

 

d-14.jpg近頃は色々窯もありますが、私は灯油窯を使用しています。
薪窯には薪窯の、また電気窯は電気窯の焼き物が在ります。いろいろな焼き物があって面白いと思います。

自分のイメージするのもが最大に表現されれば云うこと無いのですが、自分の環境に合う窯となると色んな制約が有ることです。

しかしいつの時代も同じようにイメージと制約のギャップが製作を押し進めるのであり、この時代の焼き物も同じことが云えるのだと思います。

では何故灯油窯なのか。それは、ガスや電気窯では表現しにくい、「柚子肌」云う釉調が生まれ易いからです。

これは読んで字の如く釉の表面が柚子の肌の様な光たくをなし、それ故、目に優しく手触りも良い釉調と云う事です。

食器はいつまでも飽きのこない物で在りたいと思うからです。

 

轆轤(ろくろ)

d-19.jpg水挽きともいいます。最近ようやくこの意味が判るようなりました。
これを伝えてみたいと思うのですが、まだ、言葉が見つかりません。さて、轆轤は私にとって大変重要なファクターです。

三十年色々な土で色々な物を挽いてきましたが、限りなく奥深く、また楽しく、時間を超越した様な空間を与えてくれます。

十分水を含んで良く菊揉みされた土を轆轤に載せる。土に含ませる水加減が大変重要なのです。両手に水を付け轆轤を静かに回転させる事で、まるで土が解けていくように私の思いが形になっていくのは、妙味の限りです。

水挽きには呼吸の「間」いうものがあり、その「間」を使う事でこころを土に伝えている様に思います。

 

釉(うわぐすり)

d-7.jpg私共の釉は全て天然木灰で作っています。

木灰の種類も多く、松、欅、樫、藁、など色々と使います。灰の性質も色々で混ぜる石によって沢山の美しい釉ができます。
たとえば松灰は鉄分が多いので青磁に使い、藁灰は乳濁釉というように。

また釉は土や焼き方で色々と変化します。窯変という言葉がある様に窯の雰囲気で変化する釉は大変魅力の有るものです。